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「ひとりの時間に、誰かを読む」人間関係に疲れたひとにおすすめする書籍4選

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『コンビニ人間』―ひとまわりしてすがすがしい生き方。

主人公の心情や見えている世界に、「ああ、作品にしてくれてありがとう」と思う読者が多いのではないでしょうか。冒頭13ページを読んで共感を覚えたら、あなたは○○人間の可能性が高い。

主人公はコンビニ店員として“生まれて”いるので、それ以外の生など感じていないのです。いや、忘れている?投げやりだとか忘れっぽいとかではなく、それは彼女にとって無関心な出来事なのです。

相手と認識がずれてしまう葛藤や、なんとか社会にあわせようとする奮闘。山谷を越え一周して、「そんな必要あるのか?」と首をかしげる瞬間。

この感覚を知っている人は、人間関係だの社会だのに疲弊しているか、そういう類のものを避けて生きているはず。なかなか仲間はいませんよね。この本は、孤独と定義すべきか悩む何かを、そっと満たしてくれます。

コンビニ人間

36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。

『死んでしまったぼくの見た夢』―幻想の“独り”をご堪能ください

14歳でみずから死んだ少年の、死後の旅の物語です。彼の死に理由はありません。そう、彼には意志がありません。

とはいえ、人生っていかに意志がなくても「それがおまえの意志なのだよ」と返ってくるものがあり、記憶してきたものがありますね。そういうものが、生と死の“あわい”に存在していて、それを見せてくれるのがこの本です。

とても静かで、落ち着きます。読者と主人公に何かを求めてくるひとは誰も出てきませんし、“生”に戻そうとされることもありません。

けれど最後まで読み終えたとき、ふと自分の生に立ち返ります。誰かに「幸せ」を語られるよりずっと安らかな立ち返り方ができる。本当に疲れたら、そっと読んでみてください。

死んでしまったぼくの見た夢

首吊りしたぼくを迎えに来たのは、旧式のボンネット・バスだった。むかったのは、摩訶不思議な植物園、薄い記憶の中の天神川、そして最後に辿り着いたのは…。死のフェティシズムがやるせない糖分で迫るリベラルな絵本。

『あなたは、誰かの大切な人』―気づいていない、そのしあわせを。

原田マハさんの書く小説は、出てくる人物、舞台、小物がすべて整っていて、なおかつそれを表現する言葉に無駄がなく、「その言葉がいちばん美しい、そのとおりです」と深くうなずきたくなる。

本書は“人”の関係をテーマにした短編集です。劇的なものではなくて、ほんの少しのドラマと呼びたくなる、ほどよい温度のお話ばかり。「人っていいな」と、隣にいる人の物語を偶然聴いたような感覚で納得できるから、不思議なのです。

特に私が好きなお話は「無用の人」。あらすじは話しませんが、なんと美しい物語なのだろうと、本を閉じて抱きしめたほど。この一冊を読めば、きっと大切な人を想い、ふたたび明日をはじめられるでしょう。

あなたは、誰かの大切な人

勤務先の美術館に宅配便が届く。差出人はひと月前、孤独の内に他界した父。つまらない人間と妻には疎まれても、娘の進路を密かに理解していた父の最後のメッセージとは…(「無用の人」)。歳を重ねて寂しさと不安を感じる独身女性が、かけがえのない人の存在に気が付いた時の温かい気持ちを描く珠玉の六編。

『自分の「異常性」に気づかない人たち:病識と否認の心理』―みんな、自分は普通だと思ってる

本書は精神科医と患者のやりとりを通じ、「病識と否認の心理」をサブテーマに描いた精神病の“リアル”です。一般とかけ離れた精神状態や行動は、根拠や条件によって病と判断することができます。しかし本人に自覚がない場合、その判断を受け止めることが難しく、伝える医師もそのことを配慮しつつ改善に向けて寄り添う必要があります。

この本の何に心惹かれるかといえば、「あの人おかしい」ということに端を発するあらゆるトラブルやストレスに対して、医学的な答えが掲載されているところです。もちろん「周囲にいるストレス源となる人が病である」ということではないのですが、主要なパターンの精神病と、それを否認する患者の言動を見ていると、「なるほど」と納得できるところがあるのです。

人の脳(に紐づく心)には謎が多く、個性と病の境界線もあいまい。それをふまえた上で、患者と医師のやりとりから異常性を客観視する経験は、他者から受ける影響について考えさせてくれます。

自分の「異常性」に気づかない人たち: 病識と否認の心理

強すぎる被害妄想、執拗な他者攻撃異様なハイテンション他人をふりまわすサイコパス…。それは許容できる異常性なのか、治療介入すべき異常性なのか?重篤な心の病気と診断された人が治療を受けずに他者に危害を加えたり、自殺に及んだりする事例は後を絶たない。本書は精神科医である著者が診察室で出会った、さまざまな「自分の異常性」に気づかない人たちを取り上げ、その心の病理と対処法を明らかにするものである。診療を通して、医師の苦悩や精神医療の問題点が浮き彫りになる。

本は、あなたの物言わぬ相談相手。

「人間関係に疲弊した人へ」というテーマで本を選びました。この記事を書こうと思ったきっかけは、引っ越し準備です。

自分の本棚にあった書籍をダンボールへ詰める作業をしていると、どうしても一冊ずつ手にとってしまう。久々にぱらぱらとめくると、「あのときはこう考えながら読んだ」「ここを読んで救われた」という思い出と再会します。

書籍には私の知らない知識、私の見たことのない世界、私ではない人の想いが詰まっています。人間関係には絶えず“私”と“あなた”が存在しますが、書籍は言葉で読者を包み込み、その芯にある想いや考えを引き出してくれます

人間関係に疲れてしまったとき、私は誰かに相談するよりも、本を読むタイプでした。物言わぬ彼らは、誰よりも雄弁でありながら、私の心のなかの叫びに耳を傾けてくれるから。

これを読んだ方も、もし興味があればあなたの最良の相談相手を探してみてください。まだまだ引越し準備は終わらないので、別のテーマでの書籍紹介もする予定です。お楽しみに。

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