遊び方

森の奥にいたお洒落な老魔女【ア・フルー 2015 ラ・ソルガ】

投稿日:2017年11月25日 更新日:

ワインな世界の住人たちとは…

「ワインな世界の住人たち」とは、雪樹が飲んだワインの味や香りから広がった妄想を擬人化し、物語を作るシリーズです。ワインが起点ですが、ワインの味に対する直接的な表現は一切ありません。 それでも良いという方は、どうぞワインの新たな物語へと足を踏み入れてください…。(他記事一覧)

Photo by Sebastian Unrau on Unsplash

森深く、湿気の中に鳥の鳴き声が溶けて消える。

「何時か」なんて問いを忘れてしまった頃、霧が濃くなった。

生きているのは、死を感じている時。

だから、今は生きても死んでも、いないのかもしれない。

全てが静寂に包まれた瞬間、突然、ぽっかりと空間が開いた。

樹々に囲まれて、まあるくいびつな形の家が。

まるで生きているように、呼吸をしているように見えた。

ゴンゴンゴン、と、木なのか疑うほど柔らかい質感のドアをノックする。

まるで待っていたかのように、すぐに扉は開いた。

 

「いらっしゃい、中へ」

彼女はラベンダー色の髪の毛を後ろにまとめて、やわらかく微笑んだ。

自然な色で染められたショールを肩にかけ、民族調のロングスカートから木の靴が見えた。

「道に…」

「迷ったのね、冷えているでしょう…ハーブティーが入っているわ」

すでに、丸いテーブルには湯気を立ててティーカップが二つ、置いてあった。

テーブルの中央には林檎を重ねたカゴがある。

飢えと冷えで凍えた脳が、不思議な香りのする紅茶で一気に溶かされる。

部屋の中は、昔自分を暖かく迎えてくれた部屋の匂いがした。

WerbeFabrik / Pixabay

時の止まった時計、ドール、瓶詰めのドライフルーツ。

花柄で淵の欠けた食器、ガラスが曇った窓、繊細なレースのカーテン。

それらはどこかで出会ったような、あるいは…。

「あなたは…」

「ただの魔女よ」

目を見開いて、彼女を観察する。

彼女はいたずらっぽくウインクして、紅茶をすすった。

「冗談」

本当かと思った。

いや、多分、本当だ。

溶け出した心や脳から、色々な言葉が溢れ出てくる。

私は話した。

どうして森を歩いていたのか、森に入る前には何があったのか。

話しながら泣いて、時に怒り、時に黙った。

魔女は、静かに全てを聴き、頷いた。

全てを受け止めてくれた。

やがて言葉が吐き出された頃、魔女は大きく頷いた。

「いいの、迷ったって」

langll / Pixabay

ティーポットを傾けると、いつまでも暖かい紅茶が、またカップを満たした。

そういえば、何杯目だろう。

そして、ティーポットはいつ空になるのだろう。

「誰かが作ってくれた道を歩いて行くのは簡単なことだわ」

外を漆黒の鳥が羽ばたいていった。

「迷ったってことは、あなたが道を作っている最中って証拠よ」

魔女は、優しく、深々と顔に皺を刻んで、笑った。

「悪くないじゃない、誰かがあなたの作った道をいつか歩いてくるわ」

本当かな?

本当だといいな。

cocoparisienne / Pixabay

「あれ?」

気がついたら、私は森の入口にいた。

そう、魔女に出会った気がしたのだ。

きっと…あれ、そうだったのかな…?

髪の毛に残った、紅茶と林檎の香り。

そうして、私は森に背を向けて、街へ戻る。

今回のワイン「ア・フルー 2015 ラ・ソルガ」

森深くに住む酸いもあまいも知った魔女「ア・フルー 2015 ラ・ソルガ」

ア・フルー [2015] ラ・ソルガ La Sorga A Freux

半分はタンクで15日間全房発酵、もう半分は除梗しアンフォラで発酵の後、11ヶ月間タンクで熟成。洋梨や蜜蝋、白桃の香り。爽やかな口当たりでフェンネルなど甘いスパイスのニュアンスを感じます。

「ア・フルー 2015 ラ・ソルガ」は、ワイン店でオススメの白ワインをお伺いして選んだ1本。

声を大にして言いたい、これは、超大当たりの白ワインです。

少し具体的に言いますが、おそらく、赤ワイン好きが好きになる白ワインでしょう。

 

いやあ、複雑なんです。香りが本当に複雑、もう全然底が見えない

どれだけ年月を重ねてきたんだよって突っ込みたくなる…けれど、全然古臭くはないのです。

あと、ものすごく個性的なのに、主張している訳ではない。

こんなバランスのワインって、正直めちゃめちゃ珍しいと思います。

このワイン、人ならどんな人だろう…って妄想しても、実在しませんでした。

なんだか、超人的。優しさに溢れた、人間じゃない存在。

それは、雪樹にとって、森の奥深くに住む魔女でした。

静かで懐かしい世界を感じる音楽とともに

「ア・フルー 2015 ラ・ソルガ」が内包する世界観は、Haruka Nakamuraの音楽に近しい気がします。

Haruka Nakamuraの音楽って、誰が聴いても「懐かしい」と思ってしまう魔法がかかっているんですよね。

この音楽の中だけ時が止まっていて、そっと悩みを傾聴してくれるような音楽。

音楽は様々な効能のあるサプリメントだと雪樹は感じていますが、ごく稀に「時を止める」効能を持つ音楽もあるのです。

それは、エネルギーを聴き手に送り込むのではなく、聴き手に眠る潜在的なエネルギーをそっと引き出すタイプの音楽。

「ア・フルー 2015 ラ・ソルガ」もきっとそのタイプで、飲んでいる人自身を引き出すのです。

こんな技術って、人生の酸いも甘いも知った人でなければ、なかなか持っていないですね。

だから、今に悩んでいる人に「ア・フルー 2015 ラ・ソルガ」は飲んで欲しい。

相談相手が欲しい人に、ぴったりの味と時間を届けてくれるはず。

そう、あなただけの魔女がきっと、あなたの悩みを聴いてくれますよ。

 

 

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宿木雪樹(やどりぎゆき)

物語を形にする仕事をしています。執筆を主軸に企画/デザインもしながら生きています。平穏が好き。

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